この題名・テーマを見て、いったい何の関係があるのかと思われた方が多いのではないだろうか。現在冬季北京オリンピックが開催中で、今週火曜日に行われたスピードスケート・団体追抜きの種目がパシュートである。パシュートは、自転車競技、クロスカントリーでも行われており、「団体追抜き」と呼ばれている。日本女子は残念ながら銀メダルということになったが、私は素晴らしい結果で、大賞賛している。金メダルを獲得したカナダが試合後、「最先端を走ってきた日本をずっと研究してきた。日本が競技レベルを上げてくれた」と語っていたのが印象的だったこともある。

この競技は３人が隊列を組んでスピードを競うことから、それぞれ個性があり技術も力も異なる各人が、一体とならなければならないという難しさがある。最後のコーナーで高木菜那選手がカーブの遠心力に耐え切れず転倒したが、スケートの達人を体力の限界まで追い込んだこの競技の難しさを痛感した。ここで相続の話が登場するのだが、各相続人それぞれが個性を持つだけでなく、置かれた環境や各局面での感情がこれに加わるだけに、亡くなった方の遺産承継をどうしていくのかというプロセスは、スケートのパシュート以上の一体感が必要となる。例えば、妻とその子供２、３人だけが相続人といったケースは、まだ一体感が保てるであろうが、普段接したことのない相続人が存在する場合には、その難しさの程度は一気に上がる。例えば、祖父世代の遺産がそのままになっていて、被相続人に子供がいなかったケースなどは兄弟姉妹相続となりその子孫にまで相続人が広がっている。しかもお互いは全く知らないことがほとんどである。また相続人の数が少ない場合でも、被相続人が離婚、再婚をしていて、前妻の子供と後妻が相続人になるケースなどもお互い話をしたことのないことが大半であろう。スケートのパシュートの場合には、各人が一体感を保つために練習中、レース中を通じて自助努力を繰り返すのだが、上記のような相続のケースではどういう方向で自助努力をしていったらいいのかわからないであろう。パシュートのように、隊列を組んで最終的な遺産分割を行っていく、そのプロセスを導くのが私たち司法書士の役割である。各人の思い、感情、スピード感、人生背景など色々な要素があり、おそらくすべてを列挙しろと言われても不可能である。それらをすべて飲み込んで調整していく“中立的な調整役”が司法書士だと認識している。

個人の人生のみならず、その親族全体の人生をも左右してしまうという重責を背に、“全力を尽くそう”、そう思いながらスピードスケートのパシュートの結果を自分なりに考えた次第である。

【2022年2月19日】