昨年の9月25日のブログで「シニア起業」について書かせていただいたが、昨今のオミクロンの“しぶとさ”を考えると、起業に伴うリスクも結構高くなっているのでは、と感じることがある。相談にいらっしゃる会社の決算書を拝見することがあるが、2，３年前までは財務内容も良好でキャッシュフローもしっかり回っていたのに、コロナの影響も多分にあると思うが、業況の悪化度合いに驚かされることがある。飲食業界以外の場合もである。
※決算書を拝見する局面としては、会社経営者の方から、自らの相続を考えるにあたって事業承継の観点から会社の財務状況やキャッシュフローの分析の依頼を受ける場合などである。

このような場面に直面した時、よほどマーケット調査等事前調査を尽くしてから起業しないと、勢いでやってしまうと「・・・」ということになりかねないな、と考えてしまう。何か消極的なトーンになってしまったが、私は起業される方のこれまでの経験やスキルを十分に活用できるような事業の場合には、起業に向かってよいのではないかと思っている。いわゆるアドバンテージをもって起業するということである。経験やスキルをどう活かすかは、その方の発想力や創造力次第であるが。

起業とは少し場面が違うが、設立後歴史が長い会社でも、会社の技術力、従業員のスキルや経験を新しい事業に転換して成功している例は数々ある。中小企業ではないが、例えば富士フィルムなどはその典型例ではないかと思う。かつてのフィルム事業の技術や個々人のスキルを見事に転換して、今や医薬品・医療の分野では超一流のレベルに到達している。この“転換力”については、私自身今後生きていく上で一番念頭に置いていることである。私は現在「司法書士」という士業に携わっているが、これまで銀行、債権回収会社、ネット証券のガバナンス部門など様々な経験をしてきている。お客様から様々な課題の相談を受け、共に悩み解決してきたという貴重な経験もある。こうした知識やスキルを司法書士という職業に活かすべく学び直しの毎日である。

一方で今私たちが戦っている「コロナ」はどうであろうか。2年前から日々変異を繰り返し、勢力を拡大しつつある。いわば“高度な転換力”を有しているということに他ならない。私たちは早くコロナが終息しないだろうか、以前の生活に戻れるのはいつのことだろうかということが常に頭にあるが、私たちも“以前”を思うのではなく、生活においても起業においても事業経営においても、変異を繰り返し自分自身を進化させていくという行動パターンを身に付けることが必要ではないかと思っている。人生100年時代と言われる現在、若き方もシニアの方も力強い転換力を身に付ける時代に突入している。

【2022年2月26日】