コロナ禍もあり、またサラリーマン定年退職後でもあり、接待を含めゴルフに出かける回数はめっきり減少した。一方、歳だけは確実に重ね筋力も衰えていることから、腰に負担のない正しいスイングを学び直す必要性を痛感している。そんなこともあって、YouTubeなどでレッスン動画を見る機会も多くなった。その中に桑田泉プロの「クォーター理論」、三嘴喜一プロの「MITUHASHI　TV」がある。それぞれ一見教え方が違うのであるが、共通しておっしゃっていることがある。クラブの重心はクラブの先にはなく、フェースがあることにより外側にずれている（偏重心と言うらしい）。したがって、クラブを振ると手が先行し、何もしなければクラブヘッドは遅れ、開くのが自然現象だ。このクラブフェースの動きを管理しなければ芯に当たらない。言い換えれば、球を打つという仕事をするのは、自分の手ではなく、クラブフェースであり、これがが戻ってこなければならないということらしい。しかもスイングの始めから終わりまでは1秒もないのだから、クラブフェースの管理は、ダウンスイングの前半（＝クォーター部分）で行う必要がある。“なるほど”、理屈の上ではそうであろう。しかしこれを実践するとなると「・・・」といった状態である。あるテレビ番組で、倉本昌弘プロが、プロゴルファーが注意していることを一つ挙げれば何かと問われた時のことを思い出した。その答えは、クラブフェースが通るレール軌道の入り口に如何に正しく振り下ろすかであるということらしい。やはりどのレッスンプロも同じことを言っている。何とかこの理屈を実践のフェーズに移さないと、私の腰への負担はどんどん高まる危機感を感じた。

私は、仕事で中小企業の経営改善に向けた相談を受けることがあるが、ゴルフスイング改造の例に当てはめれば、手の動き＝経営者、クラブフェース＝従業員である。経営の窮境要因は様々あるが、経営者が結構突っ走り、誰も意見をできない状態を作り出していることが要因の一つであることが多い。経営者は、働くのは誰か、実務を進めているのは誰かということを常に念頭に入れて走らなければならない。目まぐるしく変わる経営を取り巻く環境のことを考えると、「ゴルフのクォーター理論」ではないが、先々を見て早め早めに管理していく姿勢も重要である。また改善策はどんなことを考えていますかと経営者に問いかけると、固定費削減の一環で従業員の人件費カットを挙げる方がいる。こんな時、働くのは誰ですか？実務を進めているのは誰ですか？＝クラブフェースがきっちり回らなければ、事業は回らないということを忘れていませんか？自問自答してほしいと感じる。人件費削減は、従業員の士気の低下、雰囲気悪化を招く恐れがあることを認識しておくべきである。ゴルフスイングは自然現象、経営は社会現象という違いはあるが、改造、改善の共通点は一緒だなとつくづく思っている。

【2022年3月12日】