過去のブログで、社会に巣立つ前の年代層を対象に児童福祉施設で法律教室を開催し、その際に感じたことを書かせていただいた。法律教室でのテーマは様々であるが、お伝えすることの一つに「困ったことが起こった際、事態が悪化する前の早い段階で相談を」という点がある。ただ、相談してほしいとは言っても、当然のことながら慣れていないため、どのように相談すればよいのかよくわからないというのが実態であろう。私たち司法書士は、普段から相談を受ける機会が多いので、どんな点に留意して相談すればよいのかがよく見える。

そんな背景もあり、法律教室で生徒さんたちに配布する「ヤバいと思ったら早めに・・・相談の方法（4つのポイント）」というペーパーを作成してみた。令和4年4月から成年年齢が18歳に引き下がったこともあり、多くの方の参考になると思われるのでその内容を紹介しておきたい。

１．スタート台（現状）とゴール（実現したいこと）を話そう
何が起こったのかという「現状」と、自分はどうしたいのかという「実現したいこと」をはっきり伝えましょう。現状とは「いつ」「誰が」「何を」「どうした」ということを明確にすることです。
＜司法書士はこう対応します＞
・スタート台からゴールまでの道筋を「法律というルール」に従って示していきます。
・法律というルールは、相手方も従うべき「共通のルール」です。
２．とにかく早め早めに相談しよう
早い段階でご相談をいただければ、解決にいたる道筋の選択肢はたくさんあります。
【事例】インターネットで間違ってクリックをして、とんでもない金額を請求された。
⇒遅い段階で相談＝請求金額を払ってしまった後、早い段階で相談＝請求が来てすぐに
＜司法書士はこう対応します＞
・スタート台からゴールまでの道筋をいくつか考えます。
・そして、相談者にとってのメリット・デメリットを整理し、最適の方法を一緒に考えていきます。
３．「事実」を「順序立てて」包み隠さず話しましょう
現状にいたった「事実」を、時間の経過にしたがって「順序立てて」書き出してみましょう。「主張」や「推測」とは区別して話しましょう。事実の「順序」をできる限り正確に伝えましょう。​
＜司法書士はこう対応します＞
・「事実」のみからスタート台を描きます。主張や推測を事実として伝えると、ゆがんでしまいます。
・事実の順序から、何故現状にいたったかという「背景」を描きます。順序が間違って伝わると、ゆがんでしまいます。
４．手もとの証拠や資料をすべて持って行こう
証拠や資料は、「事実」を描くための最も強い武器です。「弱い事実」も「強い事実」に変えることができます。
【事例】アルバイトで働いたのに、バイト料を支払ってくれない。
証拠・資料なし：アルバイト先からもらった書類は、すべて破棄してしまった。
証拠・資料あり：アルバイト先から「労働条件通知書」をもらって保管していた。
※労働条件通知書とは、労働基準法によって事業者が働く人に対して交付することを義務付けている書面のことです。
＜司法書士はこう対応します＞
・証拠や資料から、「事実」を積み上げ、しっかりとしたスタート台を描きます。
・このスタート台は、相手から何を言われようとゆるぎません。

如何だったでしょうか。皆さんが、どなたかに相談する際に大いに役立つものではないでしょうか。相談がスムーズに進むことを願っています。

【2022年9月15日】