“あなたの身近な司法書士”、私のホームページで大きく謳っている言葉である。私の経営理念の集約といってよいものである。代表者のご挨拶にもその意味することを書かせていただいたつもりであるが、何となくわかったようなわからないような、といった感想を持たれたのではないだろうか。多くの方々は日常司法書士に接する機会が少なく、イメージしにくいかもしれない。もっと分かり易く表現できないものかと考えていたところ、新聞の書籍紹介で、小児外科医松永正訓さんの著書「患者が知らない開業医の本音」という文字に惹かれ一挙に読破した。この方は千葉大学病院の優秀な医局員、解離性脳動脈瘤を経験されたことから過酷な勤務を続けることを断念し、いわゆる勤務医から「クリニック小児科・小児外科医」として開業された方である。心の葛藤はあったようだが、決して消極的な気持ちではなく、「ここに陸果てて海始まる」の心境で第二の人生を漕ぎ出したと述べておられる。本書の“はじめに”には「これから起業したい会社勤めの人たちにとってもちょっとしたヒントになる」と書かれていたが、まだ確立途上の私自身の軸を強化してくれたように思う。

内容は多岐にわたり、多くの点でヒントを頂いたが、中でも小児科医の本質について書かれた部分は、私が冒頭に掲げた“身近な司法書士”とは何かという問いに答えてくれるものであった。若干引用させていただきたいと思う。「小児科医は、子供のことならば何でも屋さんである。結膜炎も診るし、中耳炎も診るし、アトピー性皮膚炎も診るし、夜尿症も診るし、便秘も診る、（略）まず病気の診断・治療の入り口として小児科を受診してみてはどうだろうか」このように書かれた背景には、子供は大人と異なり身体的にも発育途上であることや自分の辛い症状を正確に表現できないといった事情があるのであろう。素人目に見ても、大人は自分の症状を見て感じて、これなら○○科の医者に行った方がよいなと判断がつくであろうが、子供の場合は、そうではないということは容易に想像できる。

ひるがえって、一般の方が様々な場面で遭遇する法律問題はどうであろうか。多くの方は、法律知識に明るいわけでもなく、今直面している問題について、何がポイントでどこから手をつけたら解決に至るのか分からないのが普通である。それが分かっていれば、○○の専門家である弁護士事務所などに駆け込めばいい。先ほどの例に当てはめれば、誰か小児科医のような役割を担う身近な法律家の存在が必要だと常々感じていたところである。司法書士といえば、登記業務というイメージが強く実際もその通りだと思うが、登記という段階は、問題処理の最終段階であって、その前段階である課題解決の分野をもっと前面に出してアピールすべきだと考えている。司法書士法第１条が令和2年に改正施行され、司法書士の使命が明記された。そこには、“登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家として”と謳われている。まさに医療現場でいう小児科的な役割が期待されているのではないだろうか。司法書士に限らず士業が独立開業する際、多くのマーケティング分野の方々が、専門を絞った方がよいと発信されている。例えば相続の専門家、会社設立の専門家などといったアピールをした方がビジネスとしては発展するのではないかといった助言である。ビジネスモデルとしては、そのような考え方もあるとは思うが、私は司法書士法の改正がなされたことからも、時代が司法書士に求めているものは、法律問題のクリニック（＝外来医療を中心とする初期医療）的役割ではないだろうかと考えている。このような考えを持っている司法書士なんだな、と思い描いてこの「あしざき司法書士事務所のホームページ」をご覧いただければ幸いである。

【2023年2月４日】