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“不動産の名義変更をしたい”との電話での問合せ。こんな問い掛けで始まるお客様からの依頼事項。“どのような内容ですか?”と問い掛けると、“不動産(多くのケースは自宅である)の生前贈与をしたい”との回答である。不動産の生前贈与については、要注意である。注意すべき観点は、(1)何のために行うのか、(2)税金面の検討は終わっているのか、ということである。
(1)について
何のために行うのか。相続対策ということであればそれは合理的な理由の一つであろう。ただヒアリングした際に、そのやり取りにおいて何かモヤモヤしたものが残ると感じるときがある。例えばお客様が借金をかかえており、債権者からの強制執行の恐れがある場合に所有する不動産をなくすために、名義変更しようとすることが考えられる。この場合、刑法第96条の2「強制執行妨害目的財産損壊等の罪」に該当してしまうリスクを指摘しなければならない。司法書士がこの犯罪に加担したことにもなりかねないからだ。この条文には「強制執行を受け、若しくは受けるべき財産を」と規定してある。言い換えれば、第三者によって債務名義が取得されている場合には、この犯罪を犯すことになってしまう。
(2)について
私は税理士ではないので、具体的な案件について意見を述べることはできないが、一般論として税務面では何を検討しておかなければならないかということはお示しすることができる。税金としては、国税である「贈与税」と市町村税である「不動産取得税」である。贈与税の税率はかなり高い。最高税率は現在のところ(2026年10月現在)、55%である。贈与者が直系尊属に当たるとか、贈与者・受贈者の関係が夫婦間(居住用不動産)であれば特別控除の制度があるが、その要件も細かく規定されていることから税務署あるいは税理士によく確認して検討しなければならない。不動産の名義変更をして蓋を開けてみると、贈与税が莫大だったということになりかねない。
また、不動産の価格には、①固定資産評価額、②路線価、③時価といった異なる金額が存在する(価格が高い順に③>②>①である)。贈与税の場合は、「路線価」がベースとなるが、通常不動産を所有している人が目にするのは、毎年春に税務署から送られてくる「固定資産税の納付通知書」であり、そこに記載されている評価額は上記①である。贈与税の計算をする場合、正しくは②がベースとなるが、①の価格を念頭に贈与税を考えていたと誤解される方も多い。
(2)について、当事者が誤解していた場合に贈与契約を取り消せるか
上記(2)について誤解していたとして慌てて不動産の名義を再度移転させると二重の負担が生じてしまう。この点について、国税庁のホームページを見ると「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて(昭和39年5月23日、昭和57年5月17日一部改正)」という文書が掲載されている。上記(2)のような事情を考えた場合、まず合意解除により贈与契約を取り消した場合でも当初の贈与税課税は回避できない(なお再度の移転によって元に戻すのではなく、取消し又は解除により元の名義に戻す場合には二重に贈与税が課されることはない)。合意解除ではなく法定取消権又は法定解除権に基づいて取り消され、又は解除されその旨の申出があった場合は元に戻す名義変更がなされたことが確認された場合に限り、その贈与はなかったものとされる。法定取消権とは、例えば民法第95条に規定する「錯誤」により取り消す場合が該当するであろう(その際、不動産の所有権抹消の登記原因は、〇年〇月〇日取消となる)。民法第95条第3項に「錯誤が表意者の重大な過失によるものであって、相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき」と規定されており、上記(2)の事情がこれに該当すれば贈与はなかったものとされる可能性はある。ただし、国税庁の文書には、「申出があった場合」とされているので、税務署に申出を行いその判断を仰ぐことになる。この点については、税務署や税理士とよくよく相談する必要がある。
生前贈与には、以上のようなリスクを内包しているので、私が生前贈与の案件を受ける際の「登記事務等委任契約書」(私は登記の依頼を受ける場合には、受任内容を明確にするためにも必ず締結している)の中で、「第三者が取得した債務名義により強制執行の対象となりうる状況にないこと」「税金の取扱いについては、本委任契約の範囲外であること」を条文の中に入れ、リスクの所在を確認している。特に税金面については、不動産の名義変更の登記は、税金面での検討が終了した後の最終段階であることを念押ししてる。
【2026年10月7日】
皆さんのライフステージにおいては、登記(不動産登記、商業登記)という場面に出会うことは多くあります。
✔ネット経由で取り組んだ住宅ローン、完済したので抵当権抹消したいのだけれど。銀行の担当者にも会ったことがなくどうしたら・・・
✔父親の相続手続きの中で、父親名義となっている自宅の登記手続をどうしたらよいかわからない。
✔個人で事業やっていて銀行から借入れすることに。根抵当権というものを設定すると言われたのだけれど、これって何なの・・・
✔会社の取締役会でいろいろな議案が決議されていくのだが、何を登記したらよいのだろうか。よくわからず不安なのだが・・・
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